アウトライン作成の効用とおすすめアウトライナー4選


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アウトライン作成の効用とおすすめアウトライナー

 研究論文を書くのは大変な作業ですが、ライティングのプロセスを工夫することで、そうしない場合に比べてスムーズになります。執筆の初期段階で特に役立つツールの1つが、アウトラインです。アウトラインとは、階層構造をもつ箇条書きの文章の一群です。これは、自分の考えを整理し、論文を構成するのに役立ちます。私は論文以外にも著書、ブログなどの執筆でアウトラインを作成しています。本記事の前半では、私自身のアウトライン作成の経験を踏まえて、論文を書く前にアウトラインを作成する効用について探っていきます。また、本記事の後半では、人気のある4つのアウトライナーを紹介します。


 なお、研究論文の書き方については、以下の記事をご参照ください。

アウトラインの理解とその活用

 アウトラインの力を効果的に使いこなすためには、まずアウトラインが何であるか、その機能と働きを理解することが必要不可欠です。アウトラインとは階層構造をもつ箇条書きの文章の一群であり、これをプラグマティックな側面から言い換えると「自分の思考を視覚的に、概念的に整理する手法」と簡単に表すことができるかと思います。つまり、それは文章を構造化するツールであり、アイデアを順序立てて配置することで、それに意味を与え、コンテンツ全体の流れを良くすることが可能になります。


 アウトラインのプロセスは、具体的に文章を書き始める前の段階で、ブレインストーミングを通じてアイデアをリスト化することで機能します。この手順を踏むことで、文章全体の概観を捉え、考えを論理的な順序で整理することが可能になります。例えば、意味のある作業の利点について文章を書く場合、アウトラインには「意味のある作業の定義」「意味のある作業を評価する方法」「意味のある作業を可能にする介入方法」などのサブトピックを含めることができます。


 アウトライン作成には数ステップが存在します。まず、著書や論文で論じたい主要なポイントを明確にします。その要点が決まったら、次に各要点を詳しく説明するためのサブポイントや、それをサポートする情報を探し出します。このサブポイントは、通常、対応するメインポイントの下に階層的に配置されます。ここから、更に詳細な情報を追加したり、作品の流れや明瞭さを向上させるためにポイントを整理、結合、削除することにより、アウトラインを洗練させることができます。


 アウトラインは単なる計画書ではなく、ダイナミックで変化し続ける文書だと理解してください。それはあなたのアイデアの進化に応じて成長し、変化します。この動的な性質こそが、アウトラインの真の魅力と言えるでしょう。

アウトライン作成の効用

 私の経験上、アウトライン作成の効用は以下の通りです。

  • パラグラフ・ライティングが平易になる
  • 思考を整理できる
  • ロードマップを提供する
  • 時間を節約する
  • 質を上げる
  • 加筆修正が容易になる

パラグラフ・ライティングが平易になる

 アウトラインは、パラグラフ・ライティングを容易にします。これは、文章の構造を俯瞰しながら書き進めることができるため、箇条書きした文章からトピック・センテンス、サポート・センテンス、コンクルーディング・センテンスを見つけ出したり、創出したりしやすくなります。それにより、著者は自分の主張を明確にし、読者の読書負担を減らすことができます。


 パラグラフ・ライティングについては以下の記事をご参照ください。

思考を整理できる

 アウトラインのもう一つの利点として、思考を整理できることが挙げられます。アウトラインは、アイデアを意味のある論理的な順序に並べ、分類する役割を果たします。関連するアイデアをまとめて、それらの関連性を整理し、完成した作品のイメージを明確にすることができます。


 このように思考を整理することは、執筆プロセス全体に大きな影響を与えます。白紙のページを見ても、圧倒される感覚を抱くことがなくなります。アウトラインはあなたのスタートポイントであり、進むべき道筋を示すため、執筆という作業が難解になることを防ぎます。さらに、文章全体の一貫性と流れが良くなり、アイデアのつながりがスムーズになります。


 例を用いて説明します。例えば、作業療法の歴史について文章を書く場合を考えてみましょう。アウトラインがなければ、さまざまな時代と代表的な作業療法士についての思考が錯綜し、混沌とした、理解しにくい文章になるかもしれません。しかし、アウトラインを用いれば、年代順に思考を整理し、10年ごとや時代ごとに先人達をグループ化し、主要な作業療法士をそれぞれの貢献とともに紹介することができます。そうすれば、執筆作業がスムーズになるだけでなく、読者にとっても理解しやすい文章が作れます。


 このように、アウトラインは執筆プロセスの触媒となり、思考を整理する体系的な手法を提供し、文章が最初から最後まで一貫して流れることを保証します。アウトラインは、あなたの文章をただの良いものから素晴らしいものへと昇華させる強力なツールであり、成功するライティングプロセスには欠かせない存在なのです。

ロードマップを提供する

 文章を書く際、「ロードマップ」という概念はしばしば使われ、コンテンツの明確で詳細な計画やガイドを示します。序盤から結論までの道筋を描き、途中で取り扱う主要なポイントやそれを裏付ける情報を明確に示すのです。


 アウトラインは、まさにこの文章作成のロードマップとなります。アウトラインは、あなたの思考を整理し、文章の各部分が目的を果たすようにし、読者を論理的に思考を誘導します。また、何をいつ書くべきかを決定するのに役立ち、文章全体の流れや一貫性を維持するのに重要な役割を果たします。さらに、論旨を論理的に展開し、論旨や目的を支持する論点を適切な順序で提示することができます。


 例えば、コンフリクト・マネジメントの成功のステップを紹介する文章を作成する場合を考えてみましょう。アウトラインは、そのプロセスの各ステップを詳細に説明するロードマップとなります。コンフリクトの特定から始まり、コンフリクトの分析、マネジメント計画の立案、マネジメントの実施、成果の振り返りなどと進んでいきます。このロードマップによって、読者を論理的かつ段階的に導く文章を構築することができます。その結果、読者はあなたの主張を理解することができ、あなたの文章はより効果的で価値あるものになります。


 このように、アウトラインはロードマップとして機能し、あなたの執筆プロセスに明確な方向性を与え、あなたのアイデアを魅力的かつ理解しやすい順序で提示することを保証します。この貴重なツールの助けを借りて、あなたは執筆プロセスを自信をもって進め、自分が正しい道を歩んでいることを確認することができます。

時間を節約する

 アウトライン作成は、執筆プロセスの一部として時間を費やす追加のステップに見えるかもしれませんが、それは実は時間を節約するための重要なツールだと理解することが大切です。書き始める前に考えを整理し、コンテンツのロードマップを作ることで、作品に対して方向性と明確性を持つことができます。次に何を書くべきか、どのようにポイントを切り替えるべきかといったことを悩む時間を省くことができ、その結果、執筆プロセスは大幅に効率化します。


 長期的に見ても、アウトラインを利用することで時間を大いに節約することが可能です。まず、アウトラインがあることで、何を書くべきかの指針が常にあるため、ライターズ・ブロックに陥る可能性が低減します。また、修正に費やす時間も短縮できます。アウトラインがあれば、文章が論理的に整理されていないことや重要なポイントを見落としていることに早期に気付くことができます。アウトライン作成にかかる時間は、スムーズで速いライティングを可能にする利益を考えれば、十分に取り戻せます。


 例えば、幸福に対する作業機能障害の影響について文章を作成するというタスクがあるとします。アウトラインがないと、何度も書き直したり、セクションの並び替えを行ったりすることになり、重要な内容を見落としていることに気づくのが遅れる可能性があります。しかし、アウトラインがあれば、各セクション、サブセクション、重要なポイントなど、文章作成のロードマップを最初から明確にすることができます。これにより、何度もやり直すことなく、効率的にレポートを作成でき、時間と労力を大幅に節約することが可能となります。


 このように、アウトラインには最初に時間を投資する必要がありますが、それは執筆プロセス全体の効率性を高めるための投資です。プロジェクトの規模や複雑さに関わらず、全てのライターにとって貴重なツールと言えます。アウトラインを作ることで、あなたの執筆の旅はよりスムーズで迅速なものとなるでしょう。

質を上げる

 (当社比で)より良い文章を書くのに役立ちます。文章の「質」について語る際、私はいくつかの要素に着目しています。高品質な文章とは、明確さ、一貫性、魅力、そしてしっかりとした構成を備えているもののことを指します。それは、著者の考えやアイデアを効果的に伝達し、情報の論理的な流れを保ちつつ、読者の注意を引くことができるものです。


 ここで、アウトラインが果たす役割は非常に重要です。文章の質を向上させるために、アウトラインはコンテンツの論理的な順序を確立し、全体の一貫性と流れを改善します。アウトライン化することで、文章の全体像を把握し、主旨のズレを発見し、主旨の展開を深化し、不必要な繰り返しを避けることが可能となります。これらの要素は全て、魅力的で、メッセージを効果的に伝達できるような高品質な作品への貢献につながります。


 例えば、説得力のある議論を組み立てるプロセスを考えてみましょう。アウトラインがなければ、あなたの主張は十分に構造化されず、重要なポイントは文書の中でランダムに現れるかもしれません。また、読者もあなたの主張を追いつけず、結果的に説得力を欠いた文章になってしまう可能性があります。しかし、アウトラインがあれば、それぞれの論点を効果的に整理することができ、証拠に基づく説得力のある論点まで、論旨を明確に表現することが可能になります。その結果、あなたの主張がより強力で理解しやすくなるだけでなく、文章全体の質も向上します。


 総括すると、アウトラインの作成は文章の質を向上させるための重要なステップであり、しっかりとした構成、一貫性、そして説得力のある文章を保証します。どのような文章を書くにも、アウトラインはあなたのアイデアを効果的に伝達し、読者を始めから終わりまで引き付ける、高品質な文章を作成する上で非常に役立ちます。

加筆修正が容易になる

 アウトラインの利点として、特に見落とされがちなのが、修正・追加のプロセスにおける重要な役割です。アウトラインは作品を全体から見ることを可能にし、追加すべき情報や修正が必要な箇所を容易に特定できます。これにより、論旨のズレや裏付けの弱さ、新たな情報の有益性を捉えることができます。


 そのため、アウトラインは潜在的な問題を文章作成の初期段階で発見し、予防するための積極的な編集ツールとして機能します。文章全体の構造を把握しやすくなるため、コンテンツの流れが論理的であるか、再編成が必要であるかを判断することが可能になります。また、論旨を補強する新しい情報を見つけた場合でも、アウトラインを参照すれば、その情報を最も論理的に配置する場所を判断することができます。


 例えば、作業適応についての研究論文を執筆中だとしましょう。その途中で、作業適応の有用性を示す新たなデータを発見したとします。アウトラインがあることで、この新たなデータをどこに位置づけるべきか、作業適応の利点に関する部分か、作業有能性や作業同一性に関するセクションか、あるいは新たなセクションを設けるほど重要なのかを素早く確認することができます。また、アウトラインを利用することで、自身の主張が正確であるか、裏付けが十分になされているかを確認し、修正作業を大いに効率化することが可能です。


 つまり、アウトラインとは硬直的な構造ではなく、テーマへの理解を深め、適応的に進めていく柔軟なガイドなのです。それは追加や修正をスムーズに行うためのツールであり、豊かで包括的な文章作りに欠かせない存在です。初心者も熟達者も、アウトライン作成のプロセスを取り入れることで、文章の品質を大幅に向上させ、執筆活動をより管理しやすく、効率的にすることができます。

まとめ

 結論として、研究論文を書く前にアウトラインを作成することは有益な方法です。これにより、パラグラフ・ライティングを駆使し、思考を整理し、ロードマップを提供し、時間を節約し、より良い文章を書き、さらに加筆修正しやすくなります。アウトラインの作成には時間と労力がかかりますが、それに見合うだけのものがあります。今度、論文を書くことがあれば、本文を書き始める前にアウト ラインを作成することを検討してみてください。そうすることで、最終的な成果物の質が大きく変わるかもしれません。

おすすめアウトライナー

 アウトラインはアウトライナーを使って作成します。アウトライナーは、アウトラインを作成・編集できるソフトウェアで、思考を整理し、文章を構成するのに役立ちます。本記事の後半では、人気のある4つのアウトライナーを紹介します。WorkFlowy、Dynalist、OmniOutliner、そして、Microsoft Wordです。

WorkFlowy

公式サイト:https://workflowy.com/


 WorkFlowyはクラウドで使えるシンプルなアウトライナーです。ファイルを整理するフォルダが存在せず、1つのツリーの中ですべてのアウトラインを作成・管理します。そうした仕様になれるまではちょっと使いにくく感じるかもですが、慣れればいちいちフォルダごとにアウトラインを分けなくて良いので、むしろアウトライン作成に集中しやすいです。また、クラウド型なので同期が早く、パソコン、スマホ、タブレットといった端末でスムースに使えるので便利です。


 私もアウトラインを書きはじめた頃は使っていました。が、文字数カウントできないという理由で使用しなくなりました。アウトラインなので本来は文字数なんて気にしなくてもよいのですが、私はわりと字数の上限を意識しつつ構想を練った方が書きやすいタイプだったようです。

Dynalist

公式サイト:https://dynalist.io/


 Workflowyと同様に、Dynalistはクラウドで使うタイプのアウトライナーです。Workflowyよりも機能が豊富でして、文字数カウントもできます。また、Workflowyにはなかったフォルダが存在しています。つまり、パソコン上でファイル管理する感覚で作成したアウトラインを作成・管理することができます。その意味では、Workflowyよりも使い始めから違和感なくいけるかと思います。


 私はWorkflowyの後にDynalistを使いはじめました。現在もこれをサブで使用しています。文字数カウントできるので使い勝手がよく、だいたいの機能が無料で使えるのでおすすめです。

OmniOutliner

公式サイト:https://www.omnigroup.com/omnioutliner/


 OmniOutlinerは、WorkflowyやDynalistと異なってパソコン、スマホ、タブレットにインストールして使用する高機能のアウトライナーです。高機能だけども操作はシンプルで使いやすいです。端末にインストールして使うので、インターネットにつながっていなくても問題なく使えます。ファイル管理は端末上でフォルダを作って行います。もちろん、iCloudなどで同期できるので、複数の端末で使いこなすことができます。


 私のメインのアウトライナーはこのOmniOutlinerです。理由は、ファイルを端末で保管できるので安心感があること、文字数カウントができること、高機能なので「あれしたい」「これしたい」と思ったときにだいたい対応できること、動作が軽快で同期も競合しにくい、などがあります。個人的には、今のところこれを越えるアウトライナーはないです。

Microsoft Word

公式サイト:https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/word?activetab=tabs%3afaqheaderregion3


 実は、Microsoft Wordにもアウトライナーの機能があります。OmniOutlinerと同様に端末にインストールして使用することができます。OmniOutlinerよりも低機能ですが、恐らくほとんどの人が慣れ親しんだMicrosoft Wordでアウトラインを作成できる点は大きな魅力です。はじめてアウトライナーを使う人にはMicrosoft Wordのアウトライン機能をお薦めしています。


 私がMicrosoft Wordを使うときは、アウトライン作成後の場合がほとんどですが、月刊連載『基礎から始める研究論文の書き方講座』のアウトラインの例示はすべてMicrosoft Wordで行っております。理由は、連載論文を読んだ人がアウトラインを作成しようかなぁと思ったときに、既に手元にあるソフトですぐ取りかかれるように、と意図しているからです。

まとめ

 これらは、役に立つと思われるアウトライナーのほんの一例です。あなたに最適なツールは、あなたのニーズや好みによって異なります。クラウド型のアウトライナーを好む人もいれば、端末にインストールするアウトライナーを好む人もいるでしょう。どのようなニーズがあるにせよ、アウトライナーは、あなたが書くときに思考を整理し、集中力を維持し、執筆プロセスの効率化に役立ちます。ぜひお試しあれ!

全体のまとめ

 本記事では、アウトライン作成の効用とおすすめアウトライナーについて解説しました。アウトライナーでアウトラインを作成することは執筆プロセスの効率化に役立ちます。私自身もこれでだいぶ助かっております。「執筆をもっと効率化したい」と思っている方は、この機会にお気に入りのアウトライナーを見つけて、アウトライン作成に取り組んでみてください。

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