質的研究において、コーディングがどんな意味を持つのか考えてみると、さまざまな答えが出てきます。まず、コーディングは、質的データを整理しやすくする方法です。データが多くて複雑な場合でも、コーディングをすることで重要な部分だけに絞り込むことができます。また、コーディングは、データを分析する方法です。コーディングをすることで、データ間の関係やパターンを見つけ出すことができます。さらに、コーディングは、データを理解する方法です。コーディングをすることで、データからテーマやカテゴリーを導き出し、概念や理論を構築することができます。最後に、コーディングは、データを伝える方法です。コーディングをすることで、研究結果を明確に表現し、他者と共有することができます。
コーディングには多くの利点がありますが、簡単な作業ではありません。このプロセスでは、データを何度も丁寧に読み返す必要があります。また、自己反省的な作業でもあります。研究者は自分自身の偏見や思い込み、視点がコーディングに影響しないように注意しなければなりません。データと向き合ううちに新しい発見や気づきがあれば、コーディングをやり直したり、修正したりする柔軟性も必要です。さらに、コーディングには創造性と厳密性のバランスも必要です。研究者は、データから意味のあるパターンを見出しながら、自分の解釈やコーディングの選択に根拠や証拠を持たせなければなりません。
質的研究の分野では、様々な研究デザインやデータの種類や分析の戦略に合わせて、さまざまなコーディング技法や手法が提案されています。例えば、データの属性を整理するAttribute Coding、データの全体的な特徴を捉えるHolistic Coding、データをテーマや疑問に基づいて整理するStructural Coding、データの特徴を要約するDescriptive Coding、対象者の生の声を活かしてデータの特徴を整理するIn Vivo Coding、対象者の行動を整理するProcess Coding、対象者の視点を捉えるValues Codingなどがあります。また、これらのコーディングからパターンやテーマを生成する方法として、Focused CodingやPattern Codingなどがあります。初学者向けの手法としては、SCAT(Steps for Cording and Theorization)が提案されており、これは特に小規模なデータに適しています。これらは、データをさらに統合し、テーマや理論を導くために使われる手法です。
コーディングは芸術であり科学でもあります。技術的なスキルと直感的な感覚、そして学術的な知技が必要であり、この相互作用によって、研究者は生のデータを意味のある物語に変えることができます。