著者:京極 真
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本記事は「質的研究の半構造化インタビューが難しいです。インタビューガイドを作成して、それにそって半構造化インタビューするんですが、話がなかなか深まらないんです。どうしたらよいですか」という疑問にお答えします。
こんな方におすすめ
質的研究でインタビューしたいけど苦手
インタビューガイドにそって質問しても話が深まらない
どのように追加質問したらよいかわからない
結論をいえば、質的研究の半構造化インタビューで話が深まらないならば、参加者が語ったことについて、「それはどういうことなのか」「具体的にはどのような経験だったのか」を深掘りしていくとよいです。
半構造化インタビューでは、あらかじめ用意した質問だけでなく、参加者の応答に応じてフォローアップ質問やプローブ(掘り下げるための問いかけ)を行います。
百歩ゆずって、インタビューガイド通りに半構造化インタビューしても十分に深い語りが得られることはあるでしょう。
例えば、超緻密なインタビューガイドを作れば、ある程度は深掘りできるように質問を準備できます。
しかし、参加者が何をどのように語るかは、実際にインタビューしてみないとわかりません。
半構造化インタビューの強みは、インタビューガイドを使いながらも、参加者の語りに応じて柔軟に問いを重ねられるところにあります。
なので、インタビューガイドを上から順番に消化するだけではなく、参加者が語った内容のうち、研究目的に照らして重要なところを掘り下げていく必要があります。
本記事では、初心者向けに以下の5ステップで整理します。
半構造化インタビューの5つのステップ
1. 研究目的・研究課題の設定
2. 研究デザインとデータ収集方法の決定
3. インタビューガイドの作成
4. パイロットインタビューや練習
5. 半構造化インタビューの実施
特に、話をうまく深掘りしたいなら、3→4→5が重要です。
インタビューガイドについては、予備的なガイドを作成したうえでパイロットテストを行い、必要に応じて修正することが推奨されています。
特に、4で感触をつかんでおくとよいです。
通り一遍のインタビューではなく、参加者の語りを聞きながら、「ここはもう少し具体的に聞いたほうがよいな」「この言葉はどういう意味なのだろう」と問いを重ねる感覚を養い、本番に挑むようにしましょう。
この流れで「普段の会話」というと、研究目的や研究デザインを飛ばすので、なんか怪しいイメージをもつかもですけども、インタビューの練習にはなります。
例えば、相手が「今日は大変だった」と言ったとします。
そこで「そうなんですね」で終わるのではなく、「どんなことが大変だったんですか?」と聞けば、相手が何を「大変」と表現しているのかが具体的になります。
もちろん、研究インタビューと日常会話は同じではありません。
けども、相手が使った言葉をそのままわかったつもりにならず、「それはどういうことなのだろう」と考えながら聞く練習はできます。
本記事を読んだ後に、日常の会話でもそれをちょっと意識してもらえるとよいでしょう。
結論をいえば、参加者の語りをよく聞き、その意味、具体的な経験、背景などがわかるように問いを重ねればよいです。
ぼくは職業柄、質的研究のインタビューについて相談を受けますが、そのやり取りを見せていただいて驚くことがあります。
半構造化インタビューで話を深められない人の中には、参加者の回答をそのまま受け取って、すぐにインタビューガイドの次の質問へ進んでいる人がいます。
例えば、以下のような感じです。
語られた言葉をそのまま受け取っている例
A子:あなたの臨床では、どんな作業機能障害が問題になりますか?
B太:うーん……作業不均衡ですかねぇ。
A子:作業不均衡なんですね。では、それに対してどう対応していますか?
こういったやり取りでは、ちょっと情報が足りません。
「作業不均衡」といっても、その具体的な状況はさまざまなので、この応答だけではB太さんが何を「作業不均衡」と捉えているのかよくわからないからです。
例えば、どんな人に、どんな状況で、何が起こっていることを作業不均衡と判断したのか。
そこがわからないまま次の質問へ進むと、回答はたくさん集まっても、一つひとつの経験について十分に理解できない可能性があります。
半構造化インタビューで話を深めたいなら、参加者が使った言葉の意味や、それに関連する具体的な経験を深掘りするとよいです。
その際の手がかりとして、以下の角度から考えると質問を作りやすいです。
深掘りする手がかり
who:誰が、誰に
what:何が、何を
when:いつ、どんなとき
where:どこで、どんな場面で
how:どのように
why:なぜ、どのような理由で
例えば、以下のような感じ。
語りを深掘りする例
A子:あなたの臨床では、どんな作業機能障害が問題になりますか?
B太:うーん……作業不均衡ですかねぇ。
A子:それは、例えば、どのような方で問題になることが多いですか?(who)
B太:退院したばかりで、家に帰っても一日中何もせずに過ごしている方ですね。
A子:一日中何もせずに過ごしているというのは、具体的にはどんな感じですか?(what / how)
こうすると、「作業不均衡」という抽象的な言葉から、その人が実際に経験した具体的な状況へ話を深めていくことができます。
ただし、who、what、when、where、how、whyを順番に全部聞けばよいわけではありません。
半構造化インタビューでは、参加者の応答に応じてフォローアップ質問やプローブを使います。質問はオープンで、中立的で、わかりやすく、誘導的にならないようにすることが重要です。
なので、5W1Hは質問を作るための手がかりとして使うとよいです。
例えば、「なぜですか?」を繰り返すよりも、「そう考えたのは、どのような経験があったからですか?」など、相手が答えやすい聞き方にするとよいでしょう。
ここまでの話は、とても当たり前です。
けども、半構造化インタビューになると、インタビューガイドに意識が向きすぎて、目の前の参加者の語りを十分に聞けなくなることがあります。
大切なのは、参加者が語った言葉を「わかった」と思って終わらせないことです。
例えば、
「それはどういうことですか?」
「具体的な場面を教えてもらえますか?」
「そのとき、どのように感じましたか?」
「その後、どうなりましたか?」
「いまおっしゃった○○について、もう少し教えてください」
などと問い返します。
半構造化インタビューでは、こうしたフォローアップ質問やプローブによって、参加者の考え、経験、意味づけなどをより詳しく理解していきます。
つまり、インタビューガイドを見るだけでなく、目の前の語りを聞く。
これが話を深めるうえでとても重要です。
本記事は「質的研究の半構造化インタビューが難しいです。インタビューガイドを作成して、それにそって半構造化インタビューするんですが、話がなかなか深まらないんです。どうしたらよいですか」という疑問にお答えしました。
話を深掘りしたいなら、インタビューガイドにそって質問するだけではなく、参加者の語りに応じてフォローアップしていきましょう。
その際は、以下を質問を考える手がかりにするとよいです。
深掘りする手がかり
who
what
when
where
how
why
ただし、この6つを機械的に順番に聞く必要はありません。
大切なのは、参加者が語った言葉について、「それはどういう意味なのか」「具体的にどのような経験だったのか」がわかるように問いを重ねることです。
インタビューガイドを消化するのではなく、参加者の語りを聞いて、その語りに応じて問いを深める。
これを意識すると、半構造化インタビューはかなり変わってきます。
なお、どれくらいの人に話を聞けばよいのかは、質的研究ではわりと難しい問題です。
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