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IMRaDを使った「序論」セクションの書き方のヒント 研究論文は、学術的な知識や発見を共有するための重要なコミュニケーションツールです。しかし、研究論文を書くことは容易ではありません。特に、「序論」セクションは、研究テーマや目的を読者に伝えるための最初のチャンスであり、その後に続く「方法」「結果」「考察」のセクションのロードマップとして機能する重要な要素です。ここでは、研究テーマの背景の文脈を提供し、関連する過去の重要な知見を解説し、リサーチギャップ(未解決問題)を特定したうえで、それを基盤した目的を明確に述べます。
本記事では、「序論」セクションの効果的な書き方のヒントを解説します。これらのヒントは、「序論」セクションが何であるか、何を含めるべきか、どう書くべきかという基本的なポイントから始めて、より具体的なアドバイスまでカバーしています。これらのヒントは書き方の一例に過ぎませんが、書き慣れていない人にとってはきっと役立つでしょう。
なお、IMRaD(Introduction, Methods, Results, and Discussion)という研究論文の包括的なフォーマットや、「序論」セクション以外のセクションの書き方について詳しく知りたい方は、私の以下の連載論文もお読みください。
また、IMRaDフォーマットを理解したい方は以下の関連記事をお読みください。
なぜIMRaDの「序論」セクションが重要なのか? IMRaDの「序論」セクションは、読者があなたの研究論文に出会ったときに最初に目にするものです。これは、読者があなたの研究テーマの背景、意義、そして解決したい問題を理解するうえで非常に重要な役割を果たします。強力な「序論」セクションがあれば、読者の興味を引きつけ、あなたの研究論文が注目するに値すると納得してもらうことができます。逆に、「序論」セクションが弱かったり、不十分だったりすると、読者はあなたの研究論文に興味をもてず、読まないか、たとえ読んでくれたとしても途中で止めてしまう可能性があります。したがって、研究の背景、リサーチギャップ、目的を明確に伝える効果的な「序論」セクションを作成することが重要です。
例えば、あなたが「作業療法士のストレスと職場環境の関係」について研究論文を書くとしましょう。この場合、「序論」セクションでは、以下のような内容を含めることが考えられます。
これらの内容を説明することで、読者はあなたが何を研究しているのか、それがどんな意義や価値を持つのか、どんな方法でそれを達成しようとしているのかを理解できるようになります。
実際に書きはじめる前の事前準備として①学術誌の決定、②報告ガイドラインの入手、③研究論文の確認が必要です。これらは、料理の下ごしらえのようなものであり、これらは本記事では扱いませんが、「序論」セクションを書く上で必須です。
それでは、実際の書き方のヒントを解説します。
研究論文を書くときに最も重要なことは、その目的を明確にすることです。目的とは、その研究で何を達成したいのか、どう達成するのかを示すものです。目的が明確でなければ、研究論文の構成や内容もぼやけてしまいます。そこで、「序論」セクションを書き始める前に、自分が書こうとしている研究論文の目的を整理しましょう。
目的を整理する方法としては、以下のような質問に答えることが有効です。
これらの質問に答えることで、「序論」セクションの方向性を定めることができます。また、それぞれの質問に対応する先行研究や文献を探すことで、「序論」セクションで使う情報源を選定したり、引用したりすることが開始できます。さらに、目的を明確にすることによって、その研究で検証する仮説や問いかける疑問を明確に意識することができます。
書き慣れている人にとっては、あまりにも当たり前のことかもしれませんが、書き慣れていない人は何のために書いているのかを忘れてしまい、ライターズブロックに陥ることがあります。ライターズブロックとは、文章が思うように書けなくなってしまう現象です。ライターズブロックから抜け出すためにも、「序論」セクションを書く前にしっかりと自分が書こうとしている研究論文の目的を把握するようにしましょう。
「序論」セクションは読者の興味や関心を引くことが重要です。読者が興味や関心を持つようにするには、想定される読者(編集者、査読者を含む)をイメージしましょう。その人たちはどんなトピックに興味を持ち、どんな知識を背景にもっているでしょうか。そして、あなたの研究論文を理解するためには、何を説明する必要があるのかを考えましょう。そうすることで、読者のニーズや期待に合わせた「序論」セクションにすることができます。
想定される読者像を描く方法としては、以下のような質問に答えることが有効です。
これらの質問に答えることで、「序論」セクションで提供すべき情報や説明の量や質を決めることができます。例えば、読者があなたの研究テーマに詳しい場合は、文脈や背景の説明を省略したり、簡潔にしたりすることができます。逆に、読者があなたの研究テーマに不慣れな場合は、文脈や背景の説明を詳しくしたり、用語や概念の定義をしたりする必要があります。また、読者があなたの研究テーマに興味を持つようにするためには、そのテーマの重要性や意義を強調したり、現実的な問題や事例を紹介したりすることが効果的です。
想定される読者像を描けたら、実際に「序論」セクションを書いていくことになりますが、その導入では、研究テーマに関する文脈を説明するのが効果的です。文脈とは、研究テーマが生まれた歴史的、社会的な背景や動機です。文脈を説明することで、読者はあなたの研究テーマがどんな問題意識から生まれたのか、どんな価値観や視点から捉えられているのかを理解できます。また、文脈を説明する際には、研究テーマに関連する既存の文献や先行研究を引用することで、読者はあなたの研究テーマがその分野のより広い文脈に位置づけられていることがわかります。
文脈を説明する方法としては、以下のようなやり方があります。
文脈を説明する際には、信頼できる情報源を選び、正確に引用することが重要です。引用することで、あなたの主張や議論に根拠や支持を与えることができます。また、引用することで、あなたがその分野の知識や文献に精通していることを示すことができます。さらに、引用することで、あなたが他者の知的財産権を尊重していることを示すことができます。
文脈を説明したら、次のステップは、あなたが研究で解決すべく格闘した未解決問題(リサーチギャップ)を明確にすることです。リサーチギャップとは、あなたの研究テーマに関連する既存の文献や先行研究の間に存在する知識や理解の欠落や不足です。リサーチギャップを特定することで、あなたの研究がその分野にどのような貢献や革新をもたらすかを示すことができます。また、リサーチギャップを特定するためには、研究テーマに関連する過去の重要な知見をレビューし、わかっていることと、わかっていないことを明確にしていく必要があります。
先行研究のレビューを行う方法としては、以下のような手順があります。
先行研究のレビューを行う際には、論理的で客観的で批判的な姿勢で読み書きすることが重要です。読み書きすることで、あなたはその分野の知識や議論に参加することができます。また、読み書きすることで、あなたは自分の研究がその分野にどのように関連しているか、どのように対応しているかを明確にすることができます。
リサーチギャップを特定したら、次に、リサーチギャップを基盤に研究課題を描き、研究論文の目的を明確に記述します。目的とは、その研究で何を達成したいのか、どう達成するのかを説明したものです。目的は、研究の核心や方向性を示すものであり、読者が研究の意義や貢献を理解するための基準となるものです。目的を明確に記述することで、読者はあなたの研究がどんな問題に取り組み、どんな方法で取り組み、どんな結果や知見を得ることができるかを把握できます。
目的を明確に記述する方法としては、以下のような手順があります。
目的を明確に記述する際には、具体的で明確で簡潔で論理的な言葉で書くことが重要です。書くことで、あなたは自分の研究がどんな目標や計画や期待を持っているかを示すことができます。また、書くことで、あなたは自分の研究がどんな方法や手法やデータや分析に基づいているかを示すことができます。
「序論」セクションの本文を書くときは、アウトラインを作成してから最終的な原稿であるテキストを作成します。アウトラインとは、文章の構成や内容を大まかに示すものです。アウトラインを作成することで、自分の考えやアイデアを整理することができ、序論の全体的な構成がわかり、主要なポイントをすべてカバーしやすくなります。また、アウトラインは、実際の文章を書く前に自分の考えやアイデアを整理することができるため、時間の節約に役立ちます。つまり、「序論」セクションの要点を何度も修正する必要がないのです。「序論」セクションは最も難易度が高いので、そのハードルを下げるためにも「アウトライン→テキスト」の順で書くことを強くお薦めします。
アウトラインを作成する方法としては、以下のような手順があります。
テキストを作成する方法としては、以下のような手順があります。
「アウトライン→テキスト」という順で書くことで、「序論」セクションはより効率的で効果的で魅力的なものになります。読者は、「序論」セクションからあなたの研究テーマに対する興味や関心を持ち、研究目的に対する理解や納得を得ることができます。そして、「序論」セクションから研究テーマに対する期待や好奇心を持ち、研究論文の他の部分に移ることができます。
IMRaDの「序論」セクションは、研究テーマを紹介し、それを先行研究に位置づけるために文脈を提供し、研究上のリサーチギャップを特定し、それを元にした目的(疑問や仮説を含む)を述べるために書きます。それは、読者が研究を理解できるようになるものでなければなりません。
「序論」セクションには①研究の文脈、②過去の重要な知見のレビュー、③リサーチギャップ、④目的、を最低限記載する必要があります。
今回の研究テーマに関連しない情報を提供しすぎないようにしてください。また、今回の研究で採用した方法や明らかになった知見の詳細を説明しないようにします。これらは「方法」と「結果」のセクションで行います。
IMRaDの「序論」セクションを効果的に書くには、綿密な計画、構成、細部への 注意が必要です。これらのヒントを参考に、最初から読者の関心を引くような「序論」セクションを作成していきましょう。強力な「序論」セクションがあれば、読者が興味をもって読み進めるよう支援し、論文の他の部分の舞台を整えることができるのです。
私は、無料Webセミナー 「IMRaDを使った研究論文の書き方講座」 を開催しておりますので、ご案内申し上げます。本記事を読まれた方のニーズをよりよく満たすことができるプロダクトです。
本セミナーでは、研究論文の一般的な構成であるIMRaDを用いて、研究論文の書き方のコツを解説します。セミナーは、オンラインでされます。お申し込みは、以下のリンクからお申し込みフォームにご記入ください。皆様のご参加をお待ちしております。
京極真、博士(作業療法学)、作業療法士。
Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授(役職:保健科学研究科長、人間科学部長、他)。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程修了。2022年から2023年にかけて、全12回からなる連載『基礎から始める研究論文の書き方講座』(三輪書店)を執筆した。また『作業で創るエビデンス』(医学書院)の編著者のひとりであり、質的研究、理論研究、観察研究、尺度開発、統計を執筆した。その他、著書、研究論文多数あり。
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