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研究論文は、あなたが行った研究の目的、方法、結果、考察をまとめて発表するものです。研究論文は学術界や社会にあなたの研究成果を伝える重要な手段ですが、その書き方は決して簡単ではありません。研究論文を書く際には、一般的にIMRaD(Introduction, Methods, Results, and Discussion)というフォーマットに従います。IMRaDは研究論文の構成要素である序論(Introduction)、方法(Methods)、結果(Results)、考察(Discussion)の頭文字を取ったものです。
この記事では、IMRaDフォーマットの中でも特に重要な「方法」セクションについて詳しく解説します。「方法」セクションでは、あなたが実施した研究の手順やプロセスに関する詳細な情報を提供します。これによって、読者があなたの研究結果の妥当性と信頼性を評価できるようにします。また、「方法」セクションが充実していれば、他の研究者があなたの研究を再現することができます。これは科学的知識の発展に貢献することになります。
しかし、「方法」セクションを書く際には注意しなければならない点があります。「方法」セクションでは、あなたが実際に行ったことだけを記述し、結果や考察は含めません。また、「方法」セクションでは、過去形で書くことが基本です。さらに、「方法」セクションでは、明確かつ正確かつ具体的に書くことが求められます。読者があなたの研究手順やプロセスを理解しやすくするためには、必要な情報を省略せず、曖昧な表現や専門用語を避けることが大切です。
では、具体的にどのように「方法」セクションを書くのでしょうか?この記事では、初学者向けにIMRaDフォーマットの「方法」セクションの効果的な書き方のヒントをStep by Stepで説明します。これらのヒントを参考にして、あなたの研究論文の「方法」セクションを充実させましょう。
なお、IMRaDを使った「方法」セクションの書き方を詳しく知りたい方は、私の以下の連載論文もお読みください。これらの論文では、IMRaDフォーマットの概要や効率的な執筆順序、さまざまな研究デザインに応じた「方法」セクションの書き方のコツなどを紹介しています。
また、IMRaDを理解したい方は以下の関連記事をお読みください。
IMRaDフォーマットは、研究論文を書く際に最も一般的に使用されるフォーマットです。しかし、その中でも特に重要なセクションが「方法」セクションです。「方法」セクションは、あなたが行った研究の手順やプロセスに関する詳細な情報を開示することで、以下の3つの目的を果たします。
まず、「方法」セクションは、あなたが行った研究がどれだけ正確で信頼できるかを読者に示すことができます。あなたが使用した研究デザインや手法が適切であるかどうか、あなたが選んだ参加者やサンプルが代表的であるかどうか、あなたが収集したデータが正確であるかどうか、あなたが分析したデータが妥当であるかどうかなどについて、「方法」セクションで説明することで、読者はあなたの研究結果に対する信頼感や納得感を持つことができます。
次に、「方法」セクションは、あなたの研究を再現することができるようにすることができます。再現性とは、同じ研究デザインや手法を用いて、同じ結果が得られることを指します。再現性は科学的知識の検証や発展に不可欠な要素です。あなたの研究が再現性を持つためには、「方法」セクションであなたが行ったことをできるだけ詳細に記述する必要があります。これによって、他の研究者があなたの研究を追試したり、比較したり、拡張したりすることができます。
最後に、「方法」セクションは、あなたの研究結果を理解・解釈するための土台を提供します。「方法」セクションであなたが使用した研究デザインや手法によって、あなたの研究結果の意味や価値が変わってきます。例えば、ランダム化比較試験(RCT)は因果関係を検証する強力な研究デザインですが、実際の現場における応用性や一般化性には限界があります。一方、質的研究は深い理解や洞察を得ることができますが、客観性や信頼性には課題があります。このように、「方法」セクションであなたが選んだ研究デザインや手法の長所や短所を読者に示すことで、「結果」と「考察」のセクションであなたの研究結果を適切に理解・解釈する助けとなります。
以上のように、「方法」セクションは研究論文の中でも重要なセクションです。しかし、その重要性にもかかわらず、「方法」セクションを書くことは難しいと感じる人も多いかもしれません。そこで、以下では、「方法」セクションを書く際の具体的なヒントを紹介します。これらのヒントを参考にして、あなたの研究論文の「方法」セクションを充実させましょう。
実際に「方法」セクションを書く前に、いくつかの事前準備が必要です。まず、あなたが投稿する学術誌を決めてください。学術誌によって「方法」セクションの書き方やフォーマットに違いがあります。例えば、一部の学術誌では「方法」と「結果」を一つのセクションにまとめて記述することが求められます。また、一部の学術誌では「方法」と「参加者」を別々のセクションに分けて記述することが求められます。このように、学術誌ごとに「方法」セクションの書き方やフォーマットに違いがありますから、投稿する学術誌のガイドラインや過去の掲載論文をよく確認してください。
次に、あなたの研究分野や研究デザインに応じた報告ガイドラインを入手してください。報告ガイドラインとは、研究論文の書き方や内容に関するチェックリストやフローチャートのことです。報告ガイドラインは、あなたが研究論文の「方法」セクションに必要な情報を漏れなく記述できるようにするための便利なツールです。例えば、ランダム化比較試験(RCT)を行った場合、CONSORT(Consolidated Standards of Reporting Trials)という報告ガイドラインがあります。CONSORTは、RCTの「方法」セクションに記述すべき項目や順序を示してくれます。このように、報告ガイドラインは、「方法」セクションを書く際の指針となります。
最後に、あなたが参考にした研究論文を確認してください。あなたが行った研究と同じか似たような研究デザインや手法を用いた研究論文があれば、その「方法」セクションを参考にしてください。その研究論文では、どのような情報をどのように記述しているかを確認しましょう。ただし、そのままコピーするのではなく、あなた自身の言葉で書くことが重要です。また、その研究論文が信頼できるものかどうかもチェックしましょう。その研究論文が査読されたものかどうか、その研究論文が引用されている回数はどれくらいかなどを確認しましょう。
以上が、「方法」セクションを書く前の事前準備です。これらのステップを踏んで詳細な説明をすることで、「方法」セクションが完全でわかりやすいものになります。では、実際に「方法」セクションを書く際のヒントを見ていきましょう。以下では、「方法」セクションを書くための6つのステップを紹介します。
「方法」セクションを書く際にはじめにやることは見出しを作成することです。見出しとは、「方法」セクションの中で扱う内容を示す小さなタイトルです。見出しは読者が研究内容を把握しやすくするだけでなく、あなた自身も文章の流れや構造を整理しやすくします。
見出しは研究内容に応じて変わりますが、一般的には以下のようなものが含まれます。
見出しは簡潔でわかりやすくすることが大切です。例えば、「研究デザイン」の見出しとしては、「研究デザイン」とそのまま書き、その具体的な内実として「ランダム化比較試験」や「質的研究」などの名前を書くとよいでしょう。
研究論文の「方法」セクションを書く次のステップは、研究デザインを明記することです。研究デザインとは、あなたがどんな種類の研究を行ったかを示すものです。研究デザインにはさまざまな種類がありますが、大きく分けると以下のようになります。
あなたが選んだ研究デザインについて、「方法」セクションで説明します。その際には、以下の点に注意しましょう。
例えば、「研究デザイン」の見出しのもとでは、以下のように書くことができるかもしれません。
次に、倫理的配慮についても「方法」セクションで示す必要があります。倫理的配慮とは、あなたが研究実施に関してどんな倫理的問題に配慮したかを示すものです。倫理的配慮にはさまざまな種類がありますが、一般的には以下のようなものが含まれます。
倫理的配慮についても、「方法」セクションで説明します。その際には、以下の点に注意しましょう。
例えば、「倫理的配慮」の見出しのもとでは、以下のように書くことができるでしょう。
「方法」セクションで研究の参加者を説明することが重要です。参加者とは、あなたが調査対象とした人々のことです。参加者について説明することで、あなたの研究の対象性や一般化性を示すことができます。
参加者について説明する際には、以下のような情報を含めることが望ましいです。
参加者について説明する際には、以下の点に注意しましょう。
「方法」セクションでは、データ収集のやり方についても記述します。データ収集とは、あなたがどのようにデータを集めたかを示すものです。データ収集にはさまざまな方法がありますが、大きく分けると以下のようになります。
データ収集について説明する際には、以下の点に注意しましょう。
「方法」セクションでは、データ分析のやり方を説明します。データ分析とは、あなたが集めたデータをどのように処理して、結果や意味を導き出したかを示すものです。データ分析にはさまざまな方法がありますが、大きく分けると以下のようになります。
データ分析について説明する際には、以下の点に注意しましょう。
「序論」セクションと同様に「方法」セクションもアウトラインを作ってからテキストを書くことを推奨します。アウトラインとは、主なポイントを箇条書きや番号付けなどで整理したものです。アウトラインを作ることで、研究デザインと方法をより明確にすることができます。
アウトラインを作るメリットは以下の通りです。
アウトラインを作る方法はさまざまですが、一般的には以下のような手順で行います。
アウトラインを作ったら、それに沿ってテキストを書きます。テキストを書く際には、以下の点に注意しましょう。
IMRaD「方法」セクションは、研究デザイン、参加者、データ収集、データ分析を説明するために書きます。研究の透明性を高めて、他の研究者が研究の質を吟味したり、再現したりできるにする必要があります。
以下の内容を含めるようにしましょう。
大きくは2つあります。過去に実施したことなので、基本的には過去形で書いてください。先行研究に言及する場合などは例外です。また、得られた結果については記載しないでください。これは「結果」セクションに書きます。
IMRaDの「方法」セクションは、あなたの研究を理解・評価するために必要な情報を開示する、結果の再現可能性を担保する、ために研究論文に不可欠な要素です。上述のヒントに従い、方法について明確で透明性のある説明をすることで、あなたの研究の信頼性を確立し、読者があなたの研究を理解し、再現するのに必要な情報を提供することができるでしょう。IMRaDの「方法」セクションが充実していれば、読者に研究結果を理解・解釈するための土台を提供し、「結果」と「考察」のセクションの舞台を整えることができるのです。
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京極真、博士(作業療法学)、作業療法士。
Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授(役職:保健科学研究科長、人間科学部長、他)。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程修了。2022年から2023年にかけて、全12回からなる連載『基礎から始める研究論文の書き方講座』(三輪書店)を執筆した。また『作業で創るエビデンス』(医学書院)の編著者のひとりであり、質的研究、理論研究、観察研究、尺度開発、統計を執筆した。その他、著書、研究論文多数あり。
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