IMRaDによる研究論文の「結果」セクションの書き方のヒント


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IMRaDによる研究論文の「結果」セクションの書き方のヒント

 研究論文は、学術的な知識や発見を共有するための重要なコミュニケーションツールです。しかし、研究論文を書くことは容易ではありません。特に、「結果」セクションは、研究者が行った分析や実験から得られたデータや知見をどのように提示するかによって、読者が研究内容や価値を理解する上で大きな影響を与えます。そのため、「結果」セクションは、明確かつ簡潔な方法で研究結果を報告することが求められます。


 しかし、「結果」セクションを書く際には、多くの課題や困難があります。例えば、

  • どのようなデータや分析結果を報告すべきか?
  • どのような順序や構成で報告すべきか?
  • どのような図表や表現方法で報告すべきか?
  • どのようなレベルの詳細さや正確さで報告すべきか?
  • どのようにして読者の興味や注意を引くことができるか?

 これらの問いに答えることは、初学者(大学院生や駆けだしの研究者など)にとっては特に難しいかもしれません。そこで、この記事では、「結果」セクションを書く際に役立つヒントやテクニックを紹介します。


 この記事では、「結果」セクションを書く際に一般的に用いられるフォーマットであるIMRaD(Introduction, Methods, Results, and Discussion)に沿って説明します。IMRaDは、研究論文の構成要素として以下の4つのセクションからなります。

  • Introduction(序論):研究背景、先行研究のレビュー、リサーチギャップ、目的、仮説、疑問などを示す
  • Methods(方法):研究デザインや手法、データ分析方法などを示す
  • Results(結果):収集したデータや分析結果などを示す
  • Discussion(考察):結果に対する解釈や評価、意義や限界、提言などを示す

 この記事では、「結果」セクションに焦点を当てていますが、「序論」「方法」「考察」セクションについても知りたい方は、私の以下の連載論文もお読みください。

  • 京極真:IMRaDと効率的な執筆順.作業療法ジャーナル 56(12), 1264-1268, 2022
  • 京極真:IMRaDを使った「結果」の書き方のコツ.作業療法ジャーナル 57(1), 64-68, 2023

 また、IMRaDを包括的に理解したい方は以下の関連記事をお読みください。

なぜIMRaDの「結果」セクションが重要なのか?

 IMRaDの「結果」セクションは、研究者が発見した新しい研究結果を明確かつ簡潔に示す場所なので極めて重要です。読者があなたの研究を理解・評価したり、研究結果の信頼性を評価したりできるようにするために、できるだけ透明で正確に結果を報告することが重要であり、「結果」セクションはその求めに応じるところです。


 また、十分な「結果」セクションは、研究者が望むような結果になったかどうかは別にして、「序論」セクションで示した問題に対する解答を明確に提示したものになります。逆に、不十分な「結果」のセクションは、問題に対してどのような解答が導きだされたのかがわかりにくいものです。したがって、問題に対応させるかたちで研究結果を明確かつ正確に示すことが重要です。


 以下はそのためのヒントになります。

IMRaDの「結果」セクションの書き方のヒント

 他のセクションと同様に、執筆前の準備として、①学術誌の決定、②報告ガイドラインの入手、③研究論文の確認を行ってください。本記事はそれができたものだと仮定して、いくつかのヒントをStep by Stepで解説します。

ステップ1:図表を作成する

 結果を書くときは、いきなり本文を書かず、先に図表を作成してください。図表はそれ自体で理解できるように、書式に一貫性を持たせて、適切なラベルやキャプションを使用して内容を明確にすることが重要です。また、詳細な結果は図表で表すようにしてください。


 図表は、データや分析結果を視覚的に伝える効果的な方法です。しかし、図表を作成する際には以下の点に注意してください。

  • 図表は必要最小限にすること。不必要な図表は読者の注意力や理解力を低下させます。
  • 図表は本文と整合性があること。本文で言及しない図表や本文と矛盾する図表は混乱を招きます。
  • 図表は自己完結的であること。図表の内容や意味が図表自体やそのキャプションからわかるようにすること。本文に図表の説明を書く必要はありません。
  • 図表は適切な種類や形式であること。データや分析結果の特徴や目的に応じて、最も適した図表を選択すること。例えば、比較や変化を示す場合は棒グラフや折れ線グラフ、分布や割合を示す場合は円グラフやヒストグラム、関係性や相関を示す場合は散布図や回帰線などを用いることができます。

ステップ2:見出しを作成する

 次に「結果」セクションの見出しを作成しましょう。見出しは、読者に結果がわかりやすく伝わるようなものにしてください。見出しは、以下の点に注意して作成してください。

  • 見出しは「結果」セクションの構成や順序を示すこと。見出しは「結果」セクションの内容を要約するものであり、読者が「結果」セクションの全体像や流れを把握できるようにすることが重要です。
  • 見出しは「序論」セクションで提示した目的や仮説に対応させること。見出しは「序論」セクションで示した研究の目的や仮説に対して、どのような結果が得られたかを示すものであり、読者が研究の答えを探す手がかりとなるようにすることが重要です。
  • 見出しは具体的かつ明確にすること。見出しはあいまいな言葉や一般的な言葉を避けて、具体的かつ明確な言葉を用いることが重要です。例えば、「相関」という見出しよりも、「AとBの相関分析」という見出しの方が具体的かつ明確です。
  • 見出しは簡潔にすること。見出しは長すぎると読者の注意力を失わせる可能性があります。見出しは必要最低限の言葉で表現することが重要です。
  • 必要に応じて、見出しのなかに小見出しを作成すること。小見出しも大見出しと同様に、具体的かつ明確で簡潔なものにしてください。また、小見出しも大見出しと同じく、読者に結果が伝わるように論理的な順序で示す必要があります。

ステップ3:本文を書く

 図表を作成し、適切な見出しを設定したら、本文を書いていきます。本文では、以下の点に注意して書いてください。

  • 本文は基本的に過去形で書くこと。本文では、あなたが行った研究の結果を報告することになります。そのため、過去に行われたことを示す過去形で書くことが一般的です。ただし、図表や統計量などの事実や普遍的な真理を示す場合は、現在形で書くことができます。
  • 本文は目的や仮説に対応させながら書くこと。本文では、あなたが行った研究の結果を報告するだけでなく、その結果が「序論」セクションで示した研究の目的や仮説にどのように対応するかを示すことが重要です。読者は、あなたの研究がどのような問題を解決しようとしているか、どのような答えを導き出そうとしているかを知りたいからです。そのため、「仮説Aを検証したところ、〜〜といった結果になった」というように、目的や仮説に対応させながら結果を報告することがおすすめです。
  • 本文は図表の重要ポイントをしぼって書くこと。本文では、図表で示した詳細な結果の中から、重要なポイントや傾向を抽出して書くことが重要です。図表の内容をそのまま文章化したり、図表に含まれていない情報を付け加えたりしないでください。それは内容の重複や混乱を招くだけでなく、読者の理解を妨げる可能性があります。本文では、図表の要点を解説するかたちにしましょう。その際、図表への参照番号やラベルを明記することも忘れないでください。
  • 本文は「アウトライン→テキスト」という順で書くこと。アウトライン化は執筆プロセスにおける重要なステップであり、IMRaDの「結果」セクションを書く際にも特に有効です。事前に要点をまとめておくことで、「結果」セクションがよくまとまったものになり、読者があなたの研究の結果を十分に理解できるようになります。

ステップ4:本文は「アウトライン→テキスト」という順で書く

 アウトライン化とは、執筆する内容を大まかに整理することです。アウトライン化は執筆プロセスにおける重要なステップであり、IMRaDの「結果」セクションを書く際にも特に有効です。なぜなら、「結果」セクションでは、あなたの研究で得られたデータや分析の結果を読者に伝える必要があるからです。そのため、「結果」セクションがどのような構成になっているか、どのような情報を含んでいるか、どのような順序で提示するか、といったことを事前に考えておくことが重要です。

 アウトライン化の方法はさまざまですが、一般的には以下のような手順で行います。

  • 研究目的や仮説に基づいて、主要な結果や発見をリストアップする。  
  • 各結果や発見に対応するデータや分析の方法を記述する。
  • 各結果や発見の意義や影響を説明する。
  • 各結果や発見の間に関連性や因果関係がある場合は、それを明示する。
  • アウトラインを見直して、論理的でわかりやすい順序に並べ替える。

 アウトライン化を行うことで、「結果」セクションがよくまとまったものになり、読者があなたの研究の結果を十分に理解できるようになります。また、アウトライン化を行うことで、テキストを書く際にもスムーズに進めることができます。アウトラインからテキストへの展開は、以下のようなポイントに注意しながら行います。

  • データや分析の結果は、表や図などの視覚的な要素を用いて提示すると効果的です。表や図は番号とタイトルを付けて、本文中で参照するようにします。
  • データや分析の結果を説明する際は、客観的かつ具体的に記述します。主観的な解釈や推測は避けます。
  • データや分析の結果間の関連性や因果関係を示す際は、適切な接続詞や副詞を用いて明確に表現します。例えば、「したがって」「その結果」「一方で」「しかし」などです。

 以上のように、「アウトライン→テキスト」という順で書くことで、研究論文の「結果」セクションが読者にとってわかりやすく魅力的なものになります。IMRaD形式で「結果」セクションを書く際は、ぜひこの方法を試してみてください。

Q&A

Q.IMRaDの「結果」セクションの目的は何ですか?

 IMRaDの「結果」セクションの目的は、あなたの研究で発見した事実を提示することです。強調したい重要なポイントに明確に焦点を当てましょう。

Q.結果のセクションには何を書くべきですか?

 「結果」セクションには、収集したデータの要約、図表などでまとめた詳細な分析結果、重要なポイントを述べた本文が含まれます。読者が理解しやすいように論理的でわかりやすく記述する必要があります。

Q.「結果」セクションを書く際の注意点は?

 「結果」セクションでは、データの解釈や結論を述べないでください。これは「考察」セクションで行うべきことです。また、「方法」セクションで示していない方法でしか得られない結果を示さないでください。それを書きたければ、「方法」セクションから加筆修正する必要があります。

まとめ

 IMRaD の「結果」セクションは、研究結果を明確かつ簡潔に示す、研究論文の重要な構成要素です。これらのヒントに従い、データを明確かつ正確に示すことで、読者が研究結果を理解、解釈するために必要な情報を提供することができます。IMRaDの「結果」セクションが充実していれば研究で明らかになった知見が明確になり、「考察」セクションにうまくつなげることができます。

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著者紹介

京極真、博士(作業療法学)、作業療法士。

Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授(役職:保健科学研究科長、人間科学部長、他)。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程修了。2022年から2023年にかけて、全12回からなる連載『基礎から始める研究論文の書き方講座』(三輪書店)を執筆した。また『作業で創るエビデンス』(医学書院)の編著者のひとりであり、質的研究、理論研究、観察研究、尺度開発、統計を執筆した。その他、著書、研究論文多数あり。