質的研究におけるコーディングの役割

京極 真|博士(作業療法学)・作業療法士


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目次

質的研究におけるコーディングの役割

 質的研究に携わる多くの研究者にとって、コーディングは避けては通れない重要なプロセスです。しかし、コーディングの概念や手法に馴染みのない方にとっては、その重要性や具体的な方法論が分かりにくいかもしれません。そこで本記事では、質的研究におけるコーディングの役割と実践方法について、わかりやすく解説していきます。

質的研究におけるコーディングとは?

 コーディングとは、質的データの中に隠れている重要な情報を特定し、分類するために使用するラベル付けのことです。インタビューの文字起こしや観察記録など、膨大な質的データの中から、研究目的に関連する箇所を見つけ出し、そこに適切なコードを割り当てることで、データの意味を解読していきます。つまり、コードは単なるラベルではなく、データの本質を捉えるための強力なツールなのです。

質的研究におけるコーディングの種類

 質的研究で用いられるコーディングは、研究の目的やデータの性質によって異なります。以下は代表的なコーディングの種類です。

・Holistic coding:データ全体の特徴を要約するためのコード。

・Invivo coding:参加者の言葉をそのままコードとして使用する方法。

・Process coding: 行動や出来事の連続性に焦点を当てたコード。

・Values coding:参加者の信念、態度、価値観に焦点を当てて世界観を理解するためのコード。

 これらのコーディングを組み合わせたり、研究の進展に合わせて新たなコーディングを導入したりすることで、データの多面的な理解が可能になります。

>>「Values coding」を読む

>>「Invivo coding」を読む

質的研究におけるコーディングの具体的な手順

 コーディングは、以下のような手順で進めていきます。

1.データを繰り返し読み込む

 インタビューの文字起こしや観察記録など、質的データを何度も読み返し、全体像を把握する。

2.重要な箇所にマーキングやメモを付ける

 研究の目的に関連する箇所や、印象的な語句、繰り返し現れるテーマなどに印を付ける。

3.マークした箇所にコード(ラベル)を割り当てる

 マークした箇所の意味を表すコードを考え、割り当てる。

4.類似のコードをカテゴリーにまとめる

 共通点のあるコードを集め、より抽象度の高いカテゴリーを作る。

5.カテゴリー間の関連性を探り、テーマを導き出す

 カテゴリー同士の関係性を考え、データ全体を貫くテーマを見出す。

 このプロセスは一直線ではなく、行ったり来たりを繰り返しながら、データの本質を捉えるコードやカテゴリー、テーマを洗練させていきます。研究者はデータと対話しながら、新たな気づきを得て、コーディングを進化させていくのです。

質的研究におけるコーディングの重要性

 では、なぜコーディングが質的研究において重要なのでしょうか?以下の3つの理由が挙げられます。

1.データの整理と理解の促進

 膨大な質的データを、コードやカテゴリーを用いて整理することで、データの全体像を把握しやすくなります。

2.パターンや関連性の発見

 コーディングを通じて、データ内のパターンや関連性を見出すことができます。これは、現象の理解を深め、理論構築につながります。

3.研究の信頼性と妥当性の向上

 体系的なコーディングを行うことで、研究者の主観を活かしつつも、それに頼りすぎることなく、データに基づいた分析が可能になります。これは、研究の信頼性と妥当性を高めることにつながります。

 つまり、コーディングは質的研究の要であり、データに命を吹き込む方法なのです。丁寧なコーディングを通じて、参加者の経験や思いを深く理解し、現象の本質に迫ることができるのです。

質的研究におけるコーディングのコツ

 質的研究におけるコーディングを成功させるために、以下のようなコツを押さえておくことが大切です。

1.データに没頭し、参加者の視点に立つ

 データを深く読み込み、参加者の経験世界に浸ることで、的確なコードを付けられるようになります。何度もデータを読み、参加者の視点に立ちましょう。

2.最初は大まかなコードを作り、徐々に細かいコードを作る

 初期のコーディングでは、データを要約する大まかなコードを割り当てます。最初から詳細なコードを作ると、コードが増えすぎがちです。徐々に細かくしていきましょう。

>>「質的データ分析でコードが増えすぎる問題と対策」を読む

3.コードの名前はデータの内容を的確に表現する

 コードの名前は、データの意味を端的に表現するものを選びます。これは、説明的、解釈的ないずれのコーディングの場合でも同様です。

4.一貫性を保ちつつ、柔軟にコードを修正する

 コーディングの過程で、新たな気づきを得たら、コードを修正することを恐れないことが大切です。目的とデータに照らして、より良いコードになるよう修正しましょう、

5.カテゴリーやテーマの名前は包括的で抽象度の高いものにする

 カテゴリーやテーマの名前は、複数のコードの意味を包括し、より抽象度の高いものを選びます。

6.質的データ分析ソフトウェア(QDA)を活用する

 TaguetteやQualCoderなどのQDASを使うことで、コーディングの効率化と視覚化が可能になります。

>>「無料で使える質的データ分析のための質的研究ソフトウェア」を読む

 ただし、QDAはあくまでツールであり、分析の質は研究者の洞察力にかかっていることを忘れてはいけません。

おわりに

 質的研究におけるコーディングは、データに隠された意味や関係性を明らかにし、参加者の経験を深く理解するための重要なプロセスです。コーディングの種類は多岐にわたり、研究の目的やデータの性質に応じて適切な方法を選択することが大切です。コーディングの具体的な手順は、データを繰り返し読み込み、重要な箇所にマークし、コードを割り当て、カテゴリーを生成し、テーマを導き出すという流れで進みます。これはときに困難さがともないますが、やりがいのある営みです。ぜひ根気強くコーディングに取り組み、質的研究の奥深さと面白さを体験してみてください。

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